ビットコイン職人の朝は早い。「最近は新参者が増えてきたけど、私のところは昔ながらの製法ですよ。このところ市場は乱高下するし規格は分裂もするしもう大変なんだけどね、それでも手触りとか質感とか、変わらない良さってあるからさ」と言いながら、瀬文さんは型取りした生地を畑一面に広げていく。昔から作られるってことは価格高騰でだいぶ儲かってるんじゃないですかと尋ねると、「こんな仕事してるから婆さんには散々苦労かけててね、その苦労をやっと少しずつ返し始めたところですよ」と遠くの山を見つめあとは黙々と作業に戻り、南アルプスからの夏風が吹きわたる音だけがそこに残った。それにしてもこの爺さん、朝から訳わかんねーこと言ってんな、ほんとに。
アイコンはコタさんのフリー画像だよ。